いれずみを完全に消すのはむずかしい

2011-03-04

ここ数年、芸能人の影響なのか、おしゃれのために「プチいれずみ」をする若い人が増えています。けれど、社会へ出ると、あわてて「消してほしい」と美容外科に飛びこむヶIスが少なくありません。なぜなら、日本の社会では、いれずみをしていると損をすることが多いからです。たとえば、日本のクアハウスや温泉では、「いれずみを入れている方は入場をお断りします」という張り紙を出しています。ほかのお客さんがいれずみを見て威圧感を感じたり、不快な気分にならないためです。いれずみを入れたことを後悔し、病院を訪れても、小さくて浅いものや色が薄い黒ならば数回のレーザー照射でほとんど消えますが、完全とは言えません。さらに深いものや黒以外の色を使っている場合には、限界があるようです。どんなに小さなものでも完全に消すことはむずかしく、一生つき合わなければなりません。何より、いれずみとは皮膚をけずって傷つけ、そこに色素を入れていくものですから、体に悪いということを覚えておきましょう。傷あとを見るたびに罪の意識が……私の外来には、リストカットの傷あとをきれいにするために訪れる人もいます。二十三歳のD子さんは、二十歳の頃からひどい摂食障害におちいり、大量に食べては吐く苦しみに耐えられず、リストカットを繰り返すようになりました。さいわい、D子さんは精神科を受診し、薬でほぼ普通の生活ができるようになり。「もう絶対にしない」と決心。でも、今も時々、イライラがたまって爆発しそうになると言います。彼女のような病状は、イライラした時に周囲の人やものにあたることができず、自分自身を痛めつけてしまうらしく、それで胸がスーツと落ち着くそうです。傷あとは、ほとんどの場合、利き腕とは逆の腕の手首からひじの内側にかけてあります。傷そのものは浅いことが多いのですが、何度も繰り返すので、バーコードのような無数の傷あとが残り、社会に復帰してから半そでが着られずに悩みます。けれど、本人がいちばんつらいのは、傷あとを見るたびに「リストカットした自分」に対する罪の意識でいっぱいになり、過去の自分を思い出してしまうことです。D子さんの左腕の内側は、傷あとが何本も残って、でこぼこしていました。リストカットの傷あとは、レーザーでぼかしたり、サンドペーパーなどで皮膚の表面をけずる治療をしても、完全には消えません。無数にある傷あとをまとめて切り取り、ぬい合わせて一つにまとめる方法もありますが、新たに傷をつくることになるので、一本の傷あとは残ります。D子さんは、形成外科の先生に、レーザーを使って傷あとをぼかしてもらいました。そして、その先生から、「最後はリハビリメイクできれいになるから、心配しなくていいよ」と紹介されて、外来にやってきたのです。薄くなっていく傷あとに涙する患者さん患者さんには、まず、どの傷あとがいちばん気になるかを聞きます。たいてい本人が気にするのは、リストカットの行為におよんだ時、精神的にいちばんイヤな出来事があった傷あとです。傷の大小は関係ありません。D子さんの話を詳しく聞いたあと、私は、彼女の左腕をとり、一つひとつの方法を説明しながらリハビリメイクを行いました。初めに、傷あとの部分にミネラルウォーターをスプレーし、スクワランオイルをぬって保湿します。傷あとは乾燥してしまうので、それだけで彼女は、「なんだか、気持ちがラクになっていく」と、言いました。次に、イェローの下地のファンデーションを薄くぬります。特別なものではなく、誰でも使っている普通のファンデーションですが、イェローの効果で傷あとがだんだん目立だなくなっていきます。するとD子さんは、突然、泣きだしました。メイクを始めてからたった五、六分でこんなに傷あとが薄くなるとは、思ってもみなかったのでしょう。「傷のせいで、これまで苦しかったね。それが消えていくんだもの、うれしいね」と言葉をかけると、彼女は涙をぽろぽろ流しながらうなずきました。ファンデーション、パウダーをはたくという工程を、数回繰り返すと、傷のでこぼこも落ちつき、傷あとはほとんど見えなくなりました。「こんなに消えると思わなかった」と目を丸くし、顔はキラキラ輝いていました。

[参考]
エステティシャン指導マニュアル


センスのあるエステティックサロン


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