世界的な販路の拡大のなかでエルメスは、様々な形で多国籍の文化を尊重し製品に取り入れてきたが、それは世界的な名声を獲得した老舗プレミアム・ブランドでは、程度の多少こそあれ古くから共通する傾向である。例えばルイ・ヴィトンの定番商品「モノグラム」は1896年に発表されたが、そのデザインは当時ヨーロッパで流行していたジャポニスム(日本趣味)に大きく影響を受けたものだ。同じくルイ・ヴィトンの「ダミエ(市松模様)」(1888年)も、日本の意匠が起源だと考えられている。濃茶に茶という2色の本体に、薄茶の持ち手という同系色のグラデーションは、日本的なかさねの色合いの発想とも似ているだろう。現在、日本女性のおよそ3人に1人が持っているとされるヴィトン製品であるが、日本に由来するデザインがフランス的にアレンジされ、それが再び日本人に親しみを持って受け入れられているのだ。なお、同社の日本法人設立に貢献した秦郷次郎LVJグループ社長は、かつてヴィトン製品を日本に本格的に輸入しようとした際、ファッション専門の輸入商社の社長から、「あの柄は日本のふろしきみたいで、信玄袋のようだ。売れるわけがない」と反対されたという。カルティエやシャネルも、デザイン面で多国籍文化の融合性が高い。