円キャリー・トレードは、円金利が突出して低い(低かった)ために、低金利の円資金を借りて、その円資金を高金利通貨に交換して(外国為替取引をして)、高い利息を得ることで、利益を得ようとする行為です。円キャリー・トレードの話をすると、日本人は、このように考えます。自分の持っている円資金を銀行に円預金として預けても、利息がほとんど付かない。けれど、その円資金を外貨に交換して預ければ、たとえば、外貨預金などに外貨投資をすれば利息が付く、と。それは、間違いではありません。では、円資金を持っていなければ、円キャリー・トレードはできないのでしょうか。これまで、円とドルの関係をお話ししてきたので、ここでも、円とドルで例示しまし自分の国の通貨を対象にすると、どうしても自分の保有しているお金をイメージしてしまいますが、円もドルも自国通貨ではない人の立場に立ってみてください。つまり、日本人でもアメリカ人でもない立場です。日本と米国以外なら、どこの国でもかまわないのですが、たとえば、ロシア人の立場で考えてみましょう。ロシアの通貨はロシアンールーブル(RUB)です。ですから、その人は円も持っていませんし、ドルも持っていません。そのロシア人が円金利の低いことに目を付けて、円キャリー・トレードをしようと考えます。その人は、円資金を持っていません。しかし、持っていなければ、銀行で借りてくればよいのです。円のローン(借金)は日本人でなければできないわけではありません。たとえば、そのロシア人が銀行に行って、120万円を1年間、0・5%の金利で借りてきたとします。この120万円をドルに交換します。ドル/円の為替レートを、1ドル=120・00円とすると、受け取り額は1万ドルです。この1万ドルを銀行にドル預金します。ドル金利は5・25%ですから、1年後に元利合計10525ドルを受け取ります。1ドル=120・00円のまま変わらないとすると、(10525ドル)x(120・00)=1263000円となります。120万円を1年間、0・5%の金利で借りていますから、元金の120万円と、利息の6000円の合計1206000円を銀行に返済します。すると、57000円か手元に残ります。もちろん、ドル/円の為替レートは変動していますし、外国為替取引をする場合には、手数料がかかります。円資金を借りるときにも、ドル預金をするときにも、実際には手数料がかかりますから、現実の取引では、まるまる57000円を利益として受け取れるわけではありません。ここで言いたいのは、日本人やアメリカ人でなくても、どこの国の人でも、“同じことができる”ということです。ロシア人を例に挙げましたが、ロシア人でなく、イギリス人でも、フランス人でも、インド人でも、中国人でも、どこの国の人でもまったく同じです。そして、もちろん、日本人でも、アメリカ人でも、何ら変わりがないということです。日本人は、自国通貨が円です。ですから、自分の保有している円を支払って、高金利通貨を手に入れる、といったイメージが強くなります。しかし、円を持っていなくても、こういった取引は可能です。もう一度、ドルと円か自国通貨ではない人の立場になって考えてみてください。ここでは、インド人としましょう。外国為替取引は、通貨の交換取引ですから、ドル/円を買うということは、相手方からドルを受け取ることです。その代わりに、円を相手方に支払わなければいけません。インドの自国通貨は、インドールピー(1NR)ですから、そのインド人は、ドルも円も持っていません。そのインド人が、ドル/円を買った場合、相手方から受け取ったドルは、そのインド人の資産(財産)です。銀行のドルの口座に入金して、ドル金利を受け取ります。そのインド人は円も持っていませんから、取引の相手方に支払うために、銀行から円資金を借りてきます。これは借金ですから、そのインド人は、円の負債を持つことになります。持っているドル資産の価値が上がれば、そのインド人は、利益を得ることになります。円の価値が下がれば、負債が小さくなるのですから、同様に、そのインド人は、利益を得ます。ドル/円の為替レートを考えた場合、ドルの価値の上昇は、円の価値の下落になりますから、これは自明のことです。