おしゃれな小道具としてデザインされてきたものばかりで、衝撃には弱い。おまけに、汗や雨、泥、砂などにまみれるなど、どんな状況下であっても正確に時を刻んでくれなければ、攻撃時間の合致など、作戦遂行にも影響をおよぼしかねない。この命題に取り組んだのが、ハンス・ウィルドルフ。ロレックスの創始者で、イギリスに帰化したドイツ人だった。ロンドンで会社をおこしたが、スイスで小型の時計をつくる優秀な職人がいると知ると、さっそく腕時計を仕立てさせ世にひろめた本人だ。そのハンスが、兵士たちのために考案したのがオイスターで、上蓋をかぶせるそれまでの形式から、金属塊をくりぬいた中にメカをうずめ、ガラスをかぶせるという方法にしてみた。まるでカキのようだというので、この名になったのだが、これをハンスが発想したきっかけは、潜水艦を見学したとき舷窓から海底をのぞき、なぜ水が入ってこないのか、圧力にも計器が乱れないのか不思議に思ったことからだったという。オイスターが完成したのは、1926年。翌年、ドーバー海峡を横断する泳者が、このロレックスをつけて完泳している。